- 二階建てにも平家にも一長一短がある
- どちらが良いかは予算、家族構成などによってかわる
- これから土地を探す方は、先に平家・二階建てどちらを建てるのか決めた上で土地を決めるとスムーズで良い
昨今はデザイン性の優れた平屋が増えており空前の平屋ブームが起こっています。国土交通省「建築着工統計調査」を見ても、平屋の新築着工件数は右肩上がりです。おしゃれな平屋の施工事例を目にする機会も増え、平屋を検討している人も多いのではないでしょうか。
一方、二階建ても根強い人気があります。特に都市部には平家は適していないケースが多いため、日本の家屋の大多数は二階建て(または三階建て)です。二階建て・平家にはどのような特徴があり、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この記事では両者を徹底比較しています。これから一軒家を建てたいと考えている人は参考にしてくださいね。
二階建てか平家にするかの比較ポイント
二階建てか平屋で迷ったら以下の5つのポイントを比較して自分にどちらが合っているのかを考えましょう。
- 建築費用
- 土地の広さ
- 安全性・プライバシー
- 生活の利便性
- 住んだ後にかかる費用
二階建て・平家比較ポイント①:注文住宅だと坪単価は平家の方が高くなりがち
二階建てと平屋の大きな違いは建築費用です。同じ床面積の二階建てと平屋を比較すると平家の方が坪単価が高くなる傾向にあります。これは、平屋の方が基礎と屋根の面積が大きいためです。基本的に一軒家は基礎と屋根の工事費用が最も高くなると言われています。
また現在の日本では二階建ての家が主流なので、二階建て住宅用の資材の方が需要が高く、その分安く仕入れられるといった特徴もあります。ただし坪単価は使用する内外装材・断熱材、キッチンや浴室などの住宅設備に大きく左右されます。よって一概に平屋が高いとは言い切れませんが、同等のスペックなら二階建ての方が費用を安く抑えられる可能性は高いでしょう。
予算は住居選びにおいて最重要ポイントですね。
理想を追い求めるあまり予算オーバーになるのはよくある話。あらかじめ決めた予算を超えないよう、優先順位を決めるのがおすすめです。絶対に平家にしたいなら、他に妥協できるポイントがないか考えてみましょう。
二階建て・平家比較ポイント②:平家は土地の広さも必要になる
同じ延べ床面積の二階建てと平屋を比較すると平屋の方が広い土地が必要となります。土地に対する建物の広さは都市計画法にて用途地域ごとに上限が定められています。例えば、建ぺい率50%・容積率100%、特別な制限や緩和措置がない土地において、二階建てと平家を建てるにはどれくらいの土地が必要なのか考えてみましょう。
※建ぺい率:土地の面積に対して建物を建てられる割合
容積率:土地の面積に対して建てられる建物の延べ床面積の割合
延べ床面積120㎡の二階建ての家を建てる場合、120㎡の土地があれば建てられます(一階60㎡・二階60㎡)。
一方、同条件下でも平家を建てる場合240㎡もの土地を要します。このように、同じ延べ床面積の建物を建てる場合、二階建てに比べて平屋は2倍の土地面積が必要です。これこそが「平家は贅沢」と言われる最も大きな理由です。持っている土地、あるいは購入を考えている土地が平家の条件に合致しない場合、平家は諦めざるを得ないでしょう。
二階建て・平家比較ポイント③:安全性やプライバシーを守るなら二階建て
安全性やプライバシーを重視するなら二階建ての方がおすすめです。二階建ての上階は不審者が侵入しにくく、また通行人の視線や物音も届きにくいです。就寝時に安心感を得たいなら二階に寝室を設えるのがおすすめです。周囲に建物がある土地に建てる場合、二階にLDKを設けるという手もあります。明るさのある開放的なリビングが実現できるでしょう。
平家の場合、前述したように広い土地が必要となる上、近隣の住宅の高さや立地環境などの条件が揃わないとプライバシーを守る暮らしが難しいケースも。周りに二階建て・三階建ての家が多いと圧迫感を感じやすいでしょう。とは言え、二階建てには実は家の中に危険が潜んでいます。それは階段での事故。小さい子どもやお年寄りがいる家庭は、安全面に配慮して平家という選択肢もありでしょう。平家は二階建てに比べ、地震や風の影響も受けにくいというメリットもあります。
老後を踏まえてバリアフリーにするという選択も賢明でしょう。防犯面は外構や防犯砂利、センサーライトなどで対策することも可能です。
二階建て・平家比較ポイント④:生活の利便性は平家の方が良い
生活の利便性は平家に軍配が上がります。水回り設備をすべてワンフロアに設置できるため家事動線がシンプルです。手間がかかる階段の掃除機がけや二階トイレの掃除といった作業も必要ないため、家事がスムーズに進むといったメリットがあります。
一方二階建てには、どうしても洗濯物や重いものを持って上り下りする際負担がかかります。若いうちは階段の上り下りも苦にならないと思いますが、年を重ねると日々の積み重ねが身体に堪えるかもしれません。
二階建て・平家比較ポイント⑤:かかる税金は平家、メンテナンス費用は二階建ての方が高い
家を建てる際は建築費用だけでなく住んだ後に継続的にかかる費用にも目を向けましょう。一般的な傾向として税金は平家の方が高いと言われています。不動産取得後毎年かかる税金である固定資産税と都市計画税は、いずれも土地と家屋の評価額によって決まります。土地面積が広ければその分課される税額も当然上がります。広い土地が必要な平家は固定資産税を多く支払うことになりそうです。また建物に課される税金は「固定資産評価基準」によって決まりますが、基礎や屋根の面積が広い、つまり平家は二階建てに比べると評価額が高くなる傾向にあります。
一方、二階建てはメンテナンス費用が高くなりやすいため要注意。風雨にさらされる外壁は定期的なメンテナンスが必要なのですが、二階建ては外壁の面積が大きいため費用も高くなります。また足場を組む費用も必要です。平家も当然ながらメンテナンスは必要ですが、外壁の面積が二階建てに比べて小さい分費用は安めです。日常的に雨どいの掃除などもしやすく、メンテナンスの手間がかかりにくいでしょう。
二階建てと平家で迷っている人向けのカンタン比較表
上記で比較したポイントを一覧にまとめました。
項目 | 二階建て | 平家 |
購入費用 | 安め | 高くなることが多い |
税金 | 安め | 高い傾向 |
土地 | 狭い土地や住宅密集地にも建てられる | 広い土地が必要かつ周囲に高い建物が少ない土地が適している |
利便性 | 階段の上り下りを伴うため劣る | シンプルな家事動線を作れるため優れている |
安全性・プライバシー | プライバシーを守る暮らしが可能屋内での安全性はやや心配 | プライバシーへの配慮が必要階段での転落事故の心配はない |
メンテナンス費用 | 外壁メンテナンスの費用が高くなりやすい | 外壁が少ない分メンテナンス費用は安く済む |
このように各項目を見比べてみても一長一短あり、どちらが良いと一刀両断できるものではありません。まずは自分がどの点を重要視したいか考えてみましょう。特に予算や土地の条件はあらかじめ決まっていることも多いため、平家はその時点で選択肢から外れる人もいるでしょう。
平家も二階建ても選べる条件下なら、利便性・安全性・プライバシー・メンテナンス費用・税金といった項目を見比べて妥協したくないポイントを見つけてください。
都市部に一軒家を建てたい人など、平家がそもそも選択できないケースも多いですね。
その通り。どうしても平家を建てたいなら、まずは広い土地を見つけることが先決かもしれませんね。
二階建てのメリット・デメリット まとめ
ここまでの比較を踏まえ、二階建てのメリットとデメリットをまとめます。
二階建てのメリット
二階建てで考えられるメリットは以下の5点です。
- 狭い土地でも敷地面積を広くできる
- 建築費用を安く抑えられる
- 税金(固定資産税・都市計画税)が安く済む可能性がある
- プライバシーが守られる
- 垂直避難が可能
二階建ては垂直方向に空間を活用できるため限られた土地でも延べ床面積を広くすることが可能です。敷地面積30坪ほどでも4LDKの間取りを叶えられます。広い土地を用意するのが難しい場合は二階建てが有力候補となるでしょう。
予算が限られている場合にも二階建てはおすすめです。基礎や屋根が単純に平家の半分となる(同じ延べ床面積の場合)ため、建築費用は比較的安く済みます。建築費用だけでなく、その分固定資産税評価額も下がる傾向にあるため毎年支払う税金が安く済みます。
人の往来が多い道路に面している土地などでは、二階でプライバシーが守られた暮らしを送ることも可能でしょう。また、災害時にも二階建てにはメリットがあります。例えば洪水時。二階建てなら垂直方向への避難が可能です。
水害のおそれがある地域に家を建てる場合、住宅の安全性は考慮すべきポイントです。ハザードマップなどをしっかりチェックしましょう。
二階建てのデメリット
一方、二階建てのデメリットは以下の点です。
- 階段の上り下りが負担
- 階段のスペースが無駄になりやすい
- 地震や風の影響を受けやすい
二階建ての大きなデメリットとなり得るのは、やはり階段です。日常の家事労働において階段を何往復もするのは身体に負担がかかるでしょう。また、階段スペースを作らなければならないため、スペースが無駄になりやすい点もデメリットです。階段下を収納スペースにするといった工夫は可能ですが、同じ延べ床面積の平家の方が広々とした空間を作れます。
水害の際はメリットを発揮する可能性のある二階建てですが、一方地震や暴風時には弱く、影響を受けやすいのは難点と言えます。これは、基礎の部分が小さいためです。大地震が予測されるエリア、強い台風が多いエリアに建てる場合、考慮すべきポイントと言えます。
平家のメリット・デメリット まとめ
続いて平家のメリット・デメリットをまとめました。
平家のメリット
平家には以下のようなメリットがあります。
- シンプルな家事動線が作れる
- バリアフリー
- 階段のスペースが不要
- 家族同士コミュニケーションが取りやすい
- 安定感のある構造
- メンテナンスの費用が安め
平家はなんと言ってもその間取りのシンプルさが魅力です。水回りを1つのフロアにまとめられるため、楽に家事ができるというのは実際に平家に住んでいる人からも多く挙がる声の1つです。
また高齢の方や車椅子の方の住まいにもバリアフリーである平家はぴったりです。階段の上り下りがないのは平家の突出したメリットと言えます。階段が必要ない分、スペースも有効活用しやすいでしょう。二階建てよりも4〜5坪余裕のある間取り設計が可能です。
家族の気配を感じやすくコミュニケーションを取りやすいのも平家のメリットです。家族みんながワンフロアを共有するため、自然とLDKの空間に集まる家を作ることができます。平家は延べ床面積に対する基礎の割合が大きいため、構造的にも安定しています。また、外壁メンテナンスにかかる費用も抑えられます。平家は日常的なメンテナンス(雨どいの掃除や軒裏の蜘蛛の巣取りなど)も行いやすいでしょう。
身体的に階段のある暮らしが難しいなら、平家は最善の選択と言えます!ただし以下のデメリットがあることを忘れずに。
平家のデメリット
- 広い土地が必要
- 建築費用・土地取得費用が高くなりやすい
- プライバシーや防犯の面で心配がある
- 水害に弱い
二階建てと同じ延べ床面積の平家を建てたいなら単純に2倍の広さの土地が必要です。この点は平家の致命的なデメリットと言わざるを得ません。土地の取得費用も高額になりがちです。基礎・屋根の面積が大きい平家は建築費用も膨らむ傾向にあります。
また、平家は外部の視線と同じ高さで生活することになります。視線や物音が気になるおそれもあるため、外構で外部と遮断するような工夫は必要でしょう。不審者の侵入を防ぐため、防犯対策も必要です。平家を建てたいならハザードマップをしっかりチェックしてください。万一水害に見舞われたとき、二階に避難したり物を移したりすることができません。
二階建てか?平家か?は自分が家に求めるポイントを優先して選ぼう
二階建てにも平家にも一長一短あります。どちらが良いかは予算、家族構成などによってかわりますし、好みにも大きく左右されるでしょう。そもそも広い土地が用意できなければ平家は難しいかもしれません。土地が広くても、周囲に高い建物が多い地域には平家は適さないでしょう。
大切なのは自分が家に求めるポイント・妥協できるポイントをしっかり考えること。そして、土地の個性を活かした家を作ることです。土地がすでに決まっているなら、その土地に適している住まいは平家なのか二階建てなのかを工務店と話し合ってみましょう。これから土地を探す方は、先に平家・二階建てどちらを建てるのか決めた上で土地を決めるとスムーズかもしれません。
どちらにしても、メリット・デメリットを知っておけば工夫次第で希望に近づけることは可能です。二階建てなら二階に開放感のある明るいLDKを設置する、平家なら水回り設備や断熱材をダウングレードしてコストを抑えるなどです。二階建て・平家それぞれの良し悪しを知り、自分のライフスタイルに合った理想の暮らしを手に入れてくださいね。