- 築年数が古いマンションは内部に問題を抱えている場合がある
- 住宅ローン、控除の対象外であることも
- 購入する際は、信頼できる不動産会社にアドバイスをもらうことが大事
中古マンションの価格は築年数が経つと共に下がり、築25~30年以上になると安値のまま横ばい状態になることがほとんどです。
小島社長
事務員
Aさん(男性35歳 エンジニア)も、在宅で勤務することが多くなったため、昨年、リフォーム済みの築35年の中古マンションを購入しました。
小島社長
建物が古くても室内がきれいなら良しとする考え方もありますが、築年数の古いマンションには思いがけないリスクやデメリットがあるので注意が必要です。ここでは、そのような築年数の古いマンションの購入リスクについて説明します。
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マンションの耐用年数について
「耐用年数」という言葉を聞いたことがある方もいることでしょう。築年数が古いマンションの説明の前に、まずマンションなどの建物の「耐用年数」について説明します。
耐用年数とは?
耐用年数には、いくつかの考え方があります。主なものは次の3つです。
・法定耐用年数
・物理的耐用年数
・経済的耐用年数
法定耐用年数とは、固定資産税などの税制上の価値がなくなる期間(減価償却できる期間)を指します。事業用と非事業用とでは耐用年数が異なり、鉄筋コンクリート造の万田であれば、事業用ならば47年、非事業用であればその1.5倍の70年です。
物理的耐用年数とは、建物そのものの耐用年数です。建物の構造や立地場所、管理やメンテナンスの程度によって異なりますが、一般的にコンクリート造の建物の物理的耐用年数は100年前後だと言われています。
経済的耐用年数とは、建物が市場で売買される価値があると見なされる年数です。具体的には、建物を使用するために必要な修理費や修繕費の方が、改築したり建て直したりする費用よりも上回ってしまう時期になります。
耐用年数が過ぎたら住めない?
物理的耐用年数の場合は、安全に居住することが難しくなると言えますが、法定耐用年数や経済的耐用年数を過ぎたからといって、その建物が使えなくなるわけでも住めなくなるわけでもありません。
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築年数の古いマンションのリスクとデメリット
築年数の古いマンションには、どのようなリスクやデメリットがあるかについてみてみましょう。
耐震性の問題
築年数の古いマンションのリスクとしてまずあげられるのが、耐震性の問題です。新耐震基準が適用されるようになった1981年以前に建築されたマンションは、改めて耐震工事が施されていなければ、耐震性に不安がある場合があります。
設備や配管の問題
築年数の古いマンションは、当然ですが設備や配管なども古くなっています。いくらリフォームやリノベーションで室内をきれいにしても、建物自体の設備や管まで新しくすることはできません。
特に古い建物だと配管に金属が使われており、経年劣化や腐食で水漏れが発生する恐れがあります。マンションにもよりますが、排水管の枝管(主管と各水回りとを繋いでいる管)が区分所有とされている場合、水漏れで階下に及ぼした被害の責任を負う事態にもなり得るため注意が必要です。
小島社長
事務員
建て替え問題
築年数が経ったマンションは、建て替え問題も無視できません。マンションの住人である区分所有者の5分の4以上が賛成をすれば、建て替えが可能になります。
建て替えが決定すれば、それに伴い費用の徴収が発生する可能性があるだけでなく、建て替え中の仮住まいの費用や引っ越し費用なども必要です。いずれにせよ、お金がかかることになるのは間違いないでしょう。
購入時のお金の問題
築年数の古いマンションを購入する際、物件は安く買えても思わぬところでお金を損することがあります。
小島社長
事務員
小島社長
1982年以降に建てられて新耐震基準を満たしているか、それ以前に建てられていても一定以上の耐震基準が満たされている場合は、不動産取得税軽減の特例が適用可能です。最大で固定資産税評価額から1,200万円が控除されるので、建物部分の評価額が1,200万円以下であれば、建物部分の不動産取得税は0円になります。
しかし、1982年より前に建てられているマンションだと、耐震基準を満たす工事などを実施していなければこの特例は適用されません。特例が適用されるかどうかで数十万円違ってくることもあるので、この違いは大きいと言えるでしょう。
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まだまだある!古いマンション購入の問題点
築年数の古いマンションを購入するデメリットは、建物の古さだけではありません。ほかにどのようなデメリットがあるかをみてみましょう。
住宅ローンが使えない?
築年数の古いマンションを購入する際、金融機関によっては住宅ローンが組めない場合があります。
住宅ローンを組む際に、金融機関はローンを組んで購入する不動産に抵当権を設定します。これは、万が一ローンの返済が滞った場合、強制的にその不動産を売却してお金を回収するためです。
しかし、築年数が古すぎるマンションだと、資産価値が減っているため抵当権の担として認められない場合があります。
住宅ローン控除が受けられない?
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで家やマンションなどを購入した場合、適用要件を満たせば年末時のローン残高の1%(一般的な住宅で最大40万円まで)を10年間、所得税や住民税として納めた額から控除され、還付されるというものです。納めた税金が、毎年数十万円単位で戻ってくることになるので、住宅ローンを組んで家を購入する際の助けになります。
しかし、この住宅ローン控除は、中古マンションの場合は築年数25年以内が適用要件となっています。それ以上の築年数の場合、新耐震基準に適合していることが証明できれば適用できる場合もありますが、マンションだと個人の力では耐震補強工事の実施などできるはずもありません。
小島社長
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古いマンションは買っても大丈夫?
最後に、古いマンションを購入する際にどのような点をチェックしておけばよいかなどの注意点を説明します。
リフォームやリノベーションは表面だけ?
自分で古い築年数のマンションをリフォームやリノベーションする場合は、表面だけではなく配線や配管まで確認しておくことをおすすめします。排水管の中が腐食していないか、壁やクロスに水分が含まれていなかったかなど、細かい点までチェックしておくと安心です。
また、リフォーム済みのマンションを購入する際には、どのような工事が施されたのかを事前に詳しく確認することが大切です。
管理組合は機能している?
築年数の古いマンションの購入を検討する際は、マンションの管理状態や管理組合がしっかりと機能しているかどうかを確認するようにしましょう。大規模修繕の実施や今後の計画内容、エレベーターなどの日常点検、排水管の定期的な清掃などがきちんと行われているかどうかをチェックします。
将来、売却できる?
築年数の古いマンションの場合、将来、売却しようと思ったときに、買手が現れないことが予想されます。また、買手が住宅ローンを組もうとしても建物が古くてローンが組めないため、購入をあきらめるといったことがあるかもしれません。それらを踏まえた上で、売却予定があるならばいつ頃売却する可能性があるのか、その頃の築年数でも売れそうかどうかを購入時にシミュレーションしておくことが大切です。できれば複数の不動産会社や買取業者業に見積もりをしてもらうと良いでしょう。
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まとめ
築年数の古いマンションは、新築や築年数の浅い中古マンションよりも安くて購入しやすい一方で、古さによるリスクやデメリットもあります。室内がリフォームやリノベーション済みで表向きがきれいな物件であっても、内部に問題を抱えている場合もあるので注意が必要です。築年数の古いマンションを購入する際は、信頼できる不動産会社にアドバイスをもらった上で、十分に検討するようにしましょう。
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マンション老朽化問題とは?
マンション老朽化問題とは何ですか?
築40年超えの高経年マンションの増加が著しくなること、マンション建替えが遅々として進まないことなどが問題となります。
マンションストック数と築40年超えのマンション数
平成30年末時点でのマンションストック数は約654.7万戸となります。また平成27年国勢調査によりますと1世帯当たり平均人員(2.33人)から推計するマンション居住者は約1,525万人となり、国民の約1割に相当します。下図はマンションストック数の推移を表したものです。
- ここでいうマンションは中高層(3階建て以上)分譲・共同建てで、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造の住宅をいいます。
また平成30年末時点での築40年超えのマンションは約81.4万戸となります。この時点より10年後には約2.4倍の197.8万戸、20年後には約4.5倍の366.8万戸となり、高経年マンションが急増すると国土交通省では予測しています。
マンション建替え実施状況
平成31年4月時点でのマンション建替え実績は累計で244件となり約19,200戸に留まる状況です。(ただし、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震による被災マンションの建替え(計112件)は含みません。)
またマンション建替え実績のうち地域別で見ますと、関東が約7割、近畿が約2割となります。
マンションが老朽化すると起きる問題
マンションが老朽化すると起きる問題には何がありますか?
耐震性の問題、建物・設備の劣化、資産価値低下、バリアフリーの問題などが生じます。