- リバースモーゲージは自宅を担保にして、金融機関や公的機関から相当額の融資を受けられる制度
- リバースモーゲージを適応できる金融機関は3つ
- リバースモーゲージ制度は戸建てなどの住宅に限定されるが、金融機関によってはマンションも可能
老後の生活を充実させるために不可欠な「リバースモーゲージ」という制度をご存知ですか。リバースモーゲージは自宅を担保にして、金融機関や公的機関から相当額の融資を受けられる制度のため、家を売却することなく、まとまった資金を得ることが可能です。しかも、その返済方法は契約終了時点で担保になっている自宅を売却するだけ。
しかし現在多くの機関では戸建てのみが該当しており、マンションは制度の対象に含まれていないこともあるのです。本記事ではリバースモーゲージの概要やメリットをはじめ、マンションが対象に含まれにくい理由、適応した場合の条件や対策についても解説します。
そもそもリバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは現在住んでいる自宅等を担保にして、そこに居住し続けながら金融機関などから融資を受けられる制度を指します。仮に借入主が諸事情で死亡した際は担保にしていた不動産を処分し、借入金額を返済する仕組みです。
従来型のローンの仕組みは借入した金額を毎月返済していくことで、融資金額を減らすことが該当しますが、リバースモーゲージの場合、毎月あるいは一括で借り入れた残高を最後にまとめて返済することになります。
リバースモーゲージ制度は金融機関と公的機関が実施している
リバースモーゲージの制度は主に金融機関と公的機関で実施されています。両者で同じリバースモーゲージという制度を扱っているものの、どこのリバースモーゲージを利用するかで借入金額の使途や貸付限度額、対象範囲に含まれる物件など、それぞれ条件が異なってきます。
金融機関
メガバンクをはじめ地方銀行や信用金庫などの金融機関では、安定した収入と金融資産を有している人がリバースモーゲージの対象になります。多くの金融機関では55歳以上の方が融資対象となっており、事業目的や投資目的以外、生活にかかる資金であれば基本的に自由に使うことが可能です。
融資金額も500万円から1,000万円程度を下限とし、最大1億円から2億円程度と、公的機関に比べてかなり多くの金額を貸付することができます。ただし金融機関で取扱うリバースモーゲージは、借入対象年齢や担保物件、融資金額(貸付極度額)、対象地域などが貸付条件が異なるため注意が必要です。
公的機関
各都道府県の社会福祉協議会などの公的機関が取り扱うリバースモーゲージの特徴は所得の少ない高齢者世帯の生活支援を目的として設けられた福祉制度の一環になります。
自治体等が実施する「不動産型生活資金」という制度を活用し、所得が一定以下の高齢者世帯(原則的には65歳以上)、土地の評価額が1,500万円以上を対象に生活資金の貸し付けが受けられます。貸付限度額は土地の評価額の70%まで毎月の貸付額は30万円以内です。
マンションはリバースモーゲージに適応されにくい理由
昨今のライフスタイルや住環境を踏まえると多くの人が分譲マンションに住まれてるということも。しかし現在のリバースモーゲージ制度では金融機関・公的機関問わず、マンションを担保にした貸付を対象外としていることが一般的です。
なぜマンションがリバースモーゲージの対象外に含まれるのか、また一方で適応されやすいマンションの特徴についてみていきます。
担保価値が土地の評価額
リバースモーゲージの制度では基本的に担保となるのは不動産の建物部分ではなく、土地をメインに評価しています。そのため分譲マンションなど土地と建物が分離しているため評価がしにくく、建物自体も経年劣化によって資産価値が下落するため、対象外としている機関が多くなります。
融資する機関側にメリットがない
一戸建て住宅の場合、抵当権や所有権を有することで建物と土地の両方を持つことが可能です。分譲マンションであっても区分所有上は、建物・土地それぞれの権利を持つことができますが、現実的には住人と権利を共有しているため分離して考えられています。
そのため担保としての自由度や融資を行う機関側にメリットがないことから、リバースモーゲージの対象からマンションが除外されている機関が多くなります。
リバースモーゲージに適応されやすいマンションの特徴
マンションがリバースモーゲージの対象になりにくい一方、制度に適応されやすいマンションも存在します。次の項目が当てはまるマンションを有している場合、リバースモーゲージ制度の適応が期待できます。
駅近物件
一般的に駅近物件であるほど資産価値は高くなります。特に主要駅に隣接するマンションや各駅から徒歩5分から10分程度であれば対象地域によっては希少性も加味されるため、資産価値が落ちにくいと判断される可能性が高まります。
築年数が15~20年よりも新しいかどうか
不動産の資産価値は経過年数によって異なります。そのため築年数を15年から20年程度に設定している金融機関も多いようです。また契約時の築年数だけでなく契約者の100歳時点でのマンションの築年数で制限を設ける場合もありですので事前に確認しておきましょう。
大都市圏や人口密度が高い物件
現在リバースモーゲージを扱う機関の多くは首都圏などの大都市圏や人口密度が高い物件にお住まいの方であれば、今後のマンションの担保性も確保できることからリバースモーゲージの適応範囲に含まれる可能性が高いと言えます。
リバースモーゲージも適応できる金融機関は3つ
2019年1月時点でマンションでも利用できるリバースモーゲージを用意している金融機関は、みずほ銀行、東京スター銀行、群馬銀行の三行のみになります。
みずほ銀行: リバースモーゲージ「みずほ リ・バース60」
東京スター銀行: リバースモーゲージ「充実人生」
群馬銀行: リバースモーゲージ「夢のつづき」
マンションがリバースモーゲージに適応していない場合の対策
現在でも多くの金融機関ではマンションがリバースモーゲージに対象に含まれないことはお分かりいただけたかと思いです。しかし、だからと言って諦めるのはまだ早いです。
ここではマンションがリバースモーゲージに適応していない場合にとれる対策について解説します。
マンション売却を検討する
最も効率的な対策として挙げられるのはマンションの売却の検討です。不動産売却の場合、本来不動産が有する価値(評価額)に近い価格で売却することもできます。また長期的にみれば自宅を賃貸物件として貸し出すことで、不動産収入を得ながら老後を過ごすことも可能です。
しかし、売却や賃貸を想定する場合は対象地域にニーズがあることや一定の不動産の知識が必要になります。またこれらの対策を講じるにあたり、一定の費用が発生することを忘れてはいけません。
ハウス・リースバックを活用する
マンションがリバースモーゲージに適応していない場合、類似したシステムで「ハウス・リースバック」という制度の活用も検討できます。ハウス・リースバックとは所有されている不動産を一度不動産会社に売却しリース(賃貸)に切り替えることで、そのまま賃貸として自宅に住み続けることができるサービスを指します。
この方法なら売却して得た資金を手元に置きながら住まいを手放すことなく住むことが可能なため、引越しや新居を探す手間や費用の捻出などにフォーカスせず、安心して老後生活を送ることができます。
リバースモーゲージが適応されるメリット
リバースモーゲージが適応されることで得られるメリットについて解説します。
自宅(戸建・マンション)を売却せずに老後資金が調達できる
リバースモーゲージ制度を活用する最大のメリットは自宅を売却せず、そのまま住み続けながら老後資金を調達できる点にあります。通常ある程度の老後資金を確保するためには、自宅を手放して調達する手法が一般的です。
しかしリバースモーゲージであれば元金は死亡時に一括返済、毎月の支払いは利息のみのため、安定的に老後を送ることが可能です。また金融機関によっては契約者が死亡した場合でも契約を引き継ぐことが可能なプランも存在するため、配偶者の方も含め安心して老後生活を送ることができます。
身内や遺族に負担が出ない
リバースモーゲージの制度は一般的に契約者が死亡したときに、不動産を売却することで一括返済できるため、他の借入ローンのように残債が残ることがないため身内ら遺族に負担をかけることなく老後資金を確保できます。
融資条件が緩い
リバースモーゲージは他の借入や融資等のローンとは異なり融資条件がさほど厳しくないため、原則自宅を有していれば誰でも資金を借りることができます。
公的機関の制度では使途が生活資金も限定されていますが、金融機関での貸付でれば利用目的に制限がないため柔軟に資金を活用することが可能です。
まとめ
近年注目を浴びつつある「リバースモーゲージ」
この制度を活用することで自宅に住み続けながら、これまで不透明だった老後資金を得ることができます。また使い道が限定されておらず融資条件も比較的に緩いため、資産性の高い不動産を有していれば安定した老後を送ることが可能です。
しかし現段階ではこの制度を利用できるのは戸建てなどの住宅に限定されており、分譲マンションを保有している人にとっては利用しにくい制度になります。しかし金融機関の中にはマンションでも問題なく取り扱ってくれるため、気になる人は一度相談してみると良いでしょう。