マンション管理士とは?試験内容や合格率、仕事内容と将来性について完全ガイド

この記事のざっくりしたポイント
  1. マンション管理士とはマンションの管理全般を担うエキスパート
  2. 昨今のマンション事情を踏まえれば活躍の場はますます広がりを見せると予想されている
  3. 年齢を重ねた人のほうが適性が高いため、人生100年時代にぴったりの資格と言える

今や日本国民の1割以上がマンションに住んでおり、マンション管理・運営に関わる仕事のニーズは高まっています。マンション管理士もそのうちの1つとなっており、気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事ではマンション管理士とはどのような資格なのか、具体的な業務内容から資格受験に関する情報まであらゆる疑問に答えます。マンション管理士を目指してみたい人、マンション管理士に興味がある人はぜひ参考にしてくださいね。

国家資格のマンション管理士とは

マンション管理士とは、その名の通りマンションの管理全般を担うエキスパートです。管理組合の立場になりマンションの保全・管理に関する助言を行うのが主な業務です。「マンション管理士試験」に合格し指定登録機関「公益財団法人マンション管理センター」に登録することで、マンション管理士になることができます。

MEMO
名前は似ていますが「マンションの管理人」とは一線を画します。マンション管理士は国家資格であり、法律をはじめ様々な専門知識が求められます。
 

マンション管理士…マンションの管理人…全然違う仕事なんですね。

 
 

マンションに関わる仕事は他にもあるよ。管理業務主任者との違いを見ていこう。

 

マンション管理士と管理業務主任者の違い

マンション管理に関わる仕事の1つにマンション管理士に似た「管理業務主任者」があります。管理業務主任者は管理業者の立場から管理受託契約上の重要事項説明や管理状況のチェック、マネジメント業務を行う者を指します。マンション管理士と管理業務主任者の違いはどのような点にあるのでしょうか。以下にまとめました

相違点 マンション管理士 管理業務主任者
立場 管理組合のコンサルタント 管理業者
マンション管理会社の設置義務 なし あり
資格登録条件 試験合格
のみ
試験合格に加え2年以上の
実務経験または2日間の登録実務講習受講

両者の大きな違いは立場です。マンション管理士は管理組合の外から支援や助言を行うコンサルタントです。一方管理業務主任者は管理業務を担う管理会社の一構成員です。またマンション管理会社の設置義務にも違いが見られます。

マンション管理会社には必ず管理業務主任者が必要ですが、マンション管理士は必ずしも設置しなくても構いません。また管理業務主任者にのみ2年以上の実務経験や登録実務講習の受講が求められます

マンション管理士の年収

マンション管理士の主な就職先はマンション管理会社です。年収の平均値は400万円ほど。300〜500万円くらいの人が多いようです。しかし一部600〜800万円程度の年収を得ているマンション管理士もいます。マンション管理士のみならず宅地建物取引士、二級ボイラー技士といった資格を活かし、専門性を身に付けることで年収アップが見込めるでしょう。

MEMO
またマンション管理士として独立することも可能です。実績を積んで活躍の場を広げれば1,000万円程度の年収を得ることも夢ではありません。

マンション管理士の仕事内容

管理組合の運営、大規模修繕工事などマンションの維持・管理に関わる指導、区分所有者同士のトラブル解決のサポートなど、マンション管理士の業務内容は多岐に渡ります。具体的な仕事内容を確認していきましょう。

住民同士のトラブルを解決する

同じマンションに居を構える住民は一定のルールを守って生活する必要があります。しかし実際にはルールを守らない住民も。トラブルに発展することも珍しくありません。そんなトラブルを解決に導くのがマンション管理士です。住民の間に立ち皆が快適に暮らす手助けをするのはマンション管理士の大きな仕事です。トラブルに発展しやすい要因には以下のようなものがあります。

トラブルに発展しやすい要因
  • 足音、生活音、ペットの鳴き声などの騒音
  • 喫煙マナー(喫煙所以外での喫煙、ベランダでの喫煙による匂い問題など)
  • 駐輪場・駐車場マナー(駐車スペース以外に駐車するなど)
  • ゴミ出し(指定曜日以外のゴミ出し、分別をしないなど)

こうしたトラブルの種を放っておくとマンションの円滑な運営を揺るがすことにもなりかねません。マンション管理士には対人スキルや問題解決能力も必要と言えるでしょう。

マンション管理組合の運営や会計管理

マンション管理費等の会計監査といった煩雑な業務、また管理組合の総会の運営などもマンション管理士の仕事です。マンションには管理組合の設置が義務付けられています。管理組合はマンションの住民で構成する組織ですがマンション管理に関する法律や会計に精通した人はほとんどいないのが現実。スムーズな運営のためには管理組合の外に運営・会計管理のプロが必要です。

修繕工事に関する手続きや業者選び

建物の修繕工事に関する業務もマンション管理士の重要な仕事です。建物の経年劣化は避けられません。また突如災害に襲われることもあります。どんなマンションにも修繕工事が必要なタイミングは必ず訪れるでしょう。修繕工事に備えて住民が積み立てる「修繕積立金」の会計監査、修繕工事の施工会社選定などにもマンション管理士のサポートが求められます。

規約の作成や更新手続き

住民トラブルを解決するだけでなく、未然に防ぐことも大切です。住民全員が快適に暮らすためには一定のルール「管理規約」が必要です。1,000戸を超える大規模マンションであっても全員の共通認識が必要ですから、管理規約は重要な存在と言えるでしょう。この管理規約を新たに定めたり、更新したりするサポートもマンション管理士の業務のひとつです。管理規約には以下の条項を盛り込むのが一般的です。

管理規約に盛り込まれている一般的な条項
  1. 共用部分の範囲や使用方法
  2. 管理組合運営にあたり必要な事項
  3. 専用部分のリフォーム規制
  4. 災害時の緊急避難措置

なお管理規約は改正することもできます。しかし所定の手順を踏み、住民(区分所有者)の総数と議決権数の各4分の3以上の賛成がなければ改正はできません。

MEMO
管理規約の改正においてもマンション管理士の知識や経験を活かしたアドバイスが求められます。

管理会社の監督を行う

住民と管理会社の間に立ち管理会社を監督するのもマンション管理士の役割です。実はマンション管理士が誕生したのは2001年。同年に「マンション管理の適正化の推進に関する法律」が施行され、国土交通省に登録されている全ての管理会社に法令遵守が求められました

MEMO
マンション管理士には管理会社が法に則って業務を遂行しているか監督する責任があります。
 

マンション管理士はマンション運営に関わる様々な知識が求められるんだ。

 
 

だからこそ経験が大切なんですね。

 

マンション管理士の将来性とキャリアについて

マンション管理士に興味がある人は、この仕事の将来性やキャリアについて気になりますよね。日本は人口減少の節目にありますがマンションの供給戸数は依然増えています。国土交通省が発表する「平成30年度 住宅経済関連データ」によると、現在マンションの供給戸数は654.7万戸。1世帯あたりの平均人数2.33を掛けると総計1,525万人がマンションに住んでいる計算になります。

郊外の一戸建てから都市部のマンションに引っ越すシニア層も増えており、高齢化社会ではますますマンション需要は増えることでしょう。それに伴いマンション管理士の需要は高まると予想されます。また不動産コンサルティングや不動産管理会社に勤める人のキャリアアップに必要な資格と言えるでしょう。

 

なんと人口の1割以上がマンションに住んでいるんですね!

 
 

都市部ではもっと高い割合だよ。だからこそマンション管理士は必要なんだ。

 

不動産コンサルティングや不動産管理会社に勤める人にはおすすめ

不動産業界、中でも不動産コンサルティングや不動産管理会社では、設置義務こそないもののマンション管理士の取得はキャリアに好影響でしょう。「宅地建物取引士」「管理業務主任者」と並び不動産3資格と言われており、いずれも取得することで高い専門性を身につけられます。

MEMO
昇給・昇格要件の1つに掲げる会社もあるようです。

マンション管理士だけで独立するのは難しい

資格試験に合格し公益財団法人マンション管理センターへ登録さえすれば、マンション管理士を名乗ることができます。しかし、これだけで独立開業することは実は難しいと言われています。理由は様々ですが業務独占資格ではないことが大きく影響しています。業務独占資格とは、その資格を持っていないとできない業務を持つ資格のことです。

例えば医療行為が認められている医師、刑事事件の弁護人になれる弁護士などは独立開業しやすいとされています。マンション管理士にはマンション管理士にのみ認められている業務が存在しません。そのため、全くの未経験から独立開業するのは難易度が高いです。

MEMO
しかし不動産業界でキャリアを重ね、高い専門性を身につければ十分独立開業は可能です。

マンション管理士の資格を取得するには?

ここまでの内容を踏まえマンション管理士を目指してみたい方は、試験に関する情報をしっかりチェックしましょう!受験資格や免除規定、合格率から、合格後の公益財団法人マンション管理センターへの登録方法など、マンション管理士になるために必要な情報をまとめました。

試験に合格したら公益財団法人マンション管理センターに登録する

マンション管理士として仕事をするには試験に合格した後公益財団法人マンション管理センターへの登録が必要です。合格通知を受け取ったら以下の書類を公益財団法人マンション管理センターへ郵送しましょう。

公益財団法人マンション管理センターへ郵送する書類
  1. マンション管理士登録申請書
  2. 住民票
  3. 誓約書

また、登録には以下の費用が必要です。

登録費用
  1. 登録手数料:4,250円
  2. 登録免許税:9,000円
  3. 住民票の交付申請手数料:金額は自治体によって異なる

参考:マンション管理士 登録案内

マンション管理士の受験資格と免除について

マンション管理士は国家資格ですが実は特段の受験資格が設けられていません。年齢、性別、学歴、国籍、実務経験などを問わず誰でも受験できます。そのため国家資格でありながら比較的挑戦しやすいと言えるでしょう。

またマンション管理士試験では一部試験の免除を受けられる場合があります。それは前述した「管理業務主任者」試験の合格者。該当者はマンション管理適正化法に関する5問について、全問正解扱いとなります。そのため、管理業務主任者からマンション管理士へのステップアップを目指す人も少なくありません。

マンション管理士の受験者数と合格率

令和元年に実施されたマンション管理士試験の受験申込者数、受験者数、合格者数は以下の通りです。

マンション管理士の受験者数と合格率
  • 受験申込者数:13,961名
  • 受験者数:12,021名(受験率86.1%)
  • 合格者数:991名

出典:令和元年度マンション管理士試験の結果について

受験者数に対する合格者数の割合は8.2%です。このことからも決して難易度は低くないことが推察されます。

 

一朝一夕で取得できる資格ではなく、勉強時間をしっかり確保する必要があるでしょう。

 

マンション管理士の資格取得は40~50代が最も多い

前述したようにマンション管理士は何歳でも目指せる資格ですが、受験者のボリュームゾーンは40〜50代です。以下は令和元年の受験者の年齢分布です。

年齢  受験申込者数 受験者数 合格者数 合格率
〜29 歳 1,325( 9.5%)  1,102( 9.2%)  102
( 10.3%) 
9.3% 
30~39 歳  2,270( 16.3%) 1,840( 15.3%) 202
( 20.4%) 
11.0% 
40~49 歳  3,477( 24.9%) 2,921( 24.3%) 276
( 27.9%) 
9.4% 
50~59 歳  3,690( 26.4%) 3,248( 27.0%) 257
( 25.9%) 
7.9% 
60 歳~ 3,199( 22.9%) 2,910( 24.2%) 154
( 15.5%) 
5.3%
合計 13,961(100.0%) 12,021
(100.0%)
991
(100.0%) 
8.2%

出典:令和元年度マンション管理士試験の結果について

合格者の平均年齢は46.2歳。40代、50代の受験者数が約半数を占めており、60歳以上も少なくないことがわかります。 マンション管理士には高い専門性や経験、問題解決能力が求められるからこそ、年齢を重ねた人のほうが適性が高いと考えられます。 不動産業界で長年キャリアを積んだ人がスキルアップのために取得する例も少なくありません。また管理会社などに転職する際にも有利に働くでしょう。

MEMO
シニア層がセカンドキャリアを考える上でも、マンション管理士はおすすめの資格です。
 

人生100年時代にぴったりの資格と言えますね!

 

まとめ

マンション管理士になる方法、仕事内容、また将来性について確認しました。マンション管理士は決して難易度の低い資格ではありませんが、昨今のマンション事情を踏まえれば活躍の場はますます広がりを見せることでしょう。

マンション管理士に求められる業務は幅広く専門的な知識や経験が求められます。しかし、その分やりがいもある仕事です。マンション管理士が役割を果たすことで、マンション住民が快適に暮らせるのです。不動産業界に勤める人、またセカンドキャリアを考えているシニア層は、マンション管理士資格の取得を検討してみてください。きっと自身のキャリアや将来の役に立つと思います!

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