- 定期借地権マンションと一般的なマンションの違いとは
- 定期借地権マンションは売却価格が低くなりがち
- 借地権マンションの売却を成功させるコツとは
マンションには所有権と借地権の2種類あります。 そして借地権付きマンションは所有権マンションよりも売りにくかったり、売る際の注意点などがあったりします。 その点を知っているかどうかで借地権付きマンションを高く・早く売れるかは変わるので、必ず理解しておいた方が良いです。
そこでこの記事では借地権の種類による違い、そして借地権付きマンションを売却するの際の注意点、およびポイントなどを分かりやすく解説していきます。 借地権付きマンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
借地権とは
そもそも借地権とは建物の所有を目的に「土地を借りる」ことです。 一般的なマンションや戸建ては「所有権」といって土地も建物も自分の所有物になります。
一方、借地権の場合には土地の所有権は地主にあり、建物の所有権は自分になります。 まずは、そんな借地権について以下を知っておきましょう。
- 借地権と定期借地権の違い
- 定期借地権マンションと一般的なマンションの違い
- 定期借地権は地上権
借地権と定期借地権の違い
詳細は後述しますが借地権には普通借地権と定期借地権という2種類の権利があります。 この2つの違いは土地を返還する義務があるかどうかです。
普通借地権の場合は土地を借りている期間(借地期間)はあらかじめ決まっているものの、建物が存在する限り土地の借地契約は自動的に更新されます。
一方、定期借地権の場合は契約時に定めた借地期間が経過すれば、必ず地主に土地を返還する必要があります。
定期借地権マンションと一般的なマンションの違い
次に前項で解説した借地権の一種である「定期借地権マンション」と、一般的なマンションの違いを解説します。 そもそも一般的なマンションとは「所有権マンション」のことであり、所有権マンションは土地も建物も所有物になります。 そのため所有権マンションに住むことができる期間は特に定められておらず、理論上は永久に住むことができます。
一方、定期借地権マンションの場合は借地契約が満了すれば退去することになります。 仮に「50年」の定期借地権マンションであれば、50年後は地主に土地を返還しマンションから退去します。
また契約内容にもよりますが、建物を解体してから土地を地主に返還するケースが多いです。 補足として普通借地権マンションの場合は契約時に決めた期間が経過しても、上述したようにマンションが存在すれば基本的に自動更新できます。
そのため所有権マンションと同じように、半永久的に住むことができると思って問題ないでしょう。
え?定期借地権マンションの場合は期間が満了したら絶対に退去しなければならないんですか?
そうだね。契約上は必ず土地を返還することになるから、退去することになるよ。
定期借地権は地上権
次に借地権の権利の種類について解説します。 借地権は賃借権と地上権の2種類あります。 簡単にいうと地上権の方が賃借権よりも、「借りる側」の立場からすると強い権利になります。
普通借地権は賃借権が大半で定期借地権は地上権が大半であると覚えておきましょう。 具体的には定期借地権(地上権)マンションであればマンションを売却するときは地主に通知するだけで売却することが可能であり、地主の承諾が不要な場合もあります。
一方、普通借地権(賃借権)マンションは建物売却時は地主に通知した上で必ず承諾を得る必要があります。 このように定期借地権は土地を借りる期間が決まっているものの、ある程度自由に売買できる点が特徴です。
ここまでをまとめると…借地権には普通借地権と定期借地権の2種類があり「普通借地権≒賃借権」で「定期借地権≒地上権」ということです。 また、一般的なマンションは所有権マンションになります。
普通借地権と定期借地権の種類
前項までで借地権には普通借地権と定期借地権の2種類あることが分かったと思います。 次は普通借地権と定期借地権の中でも、さらに以下の種類がある点について詳しく解説していきます。
1992年8月を境に法律が変わったことで借地権には旧法と新法の2種類あります。 上記のように旧法は普通借地権のみです。 つまり1992年8月以前の借地権は「旧法普通借地権」しか存在せず、新法になったことでほかの4つの借地権が誕生したということです。 そして、その4つのうち3つが定期借地権になります。
何か…ややこしいですね…。
ちょっと複雑だけと、マンションで多いのは旧法普通借地権と一般定期借地権かな。 とりあえずは、この2つを理解しておけば問題ないよ。
普通借地権の種類① 旧法借地権
まず旧法借地権から解説します。 旧法借地権は昔から存在する借地権であり、法律が変わった1992年8月以降では新たに締結することができない借地権です。 ただ1992年8月以前に旧法普通借地権を締結した場合のみ、旧法のルールのまま契約を更新することができます。
そのため2020年現在でも旧法借地権のルールで契約更新している物件はたくさんあります。 旧法借地権の借地期間は、たとえばマンションのような堅固な建物は30年以上の期間に設定することも可能です。
普通借地権の種類② 新法借地権
ここから先は借地権の中でも新法の解説になります。 そもそも新法ができた理由は、旧法借地権は建物が存在する限り半永久的に居住できるので、賃借人の権利が強過ぎると判断されたからです。
そのため定期借地権をはじめとした新法ができました。 その新法の中でも旧法借地権の流れをくむ新法借地権から解説します。 結論からいうと新法借地権と旧法借地権はそこまで変わりません。
新法借地権は上述のように一律30年の契約期間となっており、旧法と違い30年以上の契約はできません。 また、更新時の年数も旧法よりは短期間になっています。この点は若干賃借人の権利が弱くなっています。
しかし新法借地権も旧法と同じく、基本的に建物がある限り契約は自動更新になります。 そのため、賃借人に有利である点は旧法借地権とそこまで変わらないといえるでしょう。
このように、普通借地権は旧法も新法もそこまで変わりなく、基本的に永住できる権利と思って問題ありません。
定期借地権の種類① 一般定期借地権
これ以降は新法の中でも「定期借地権」について解説します。 上述したように、そもそも新法ができた理由は旧法が賃借人に有利過ぎたからです。 ただ前項の新法借地権も賃借人に有利なので、新法では普通借地権以外に新しく定期借地権という権利をつくりました。
定期借地権は3種類あるので、まずは一般定期借地権から解説します。 通常の居住用建物が定期借地権の場合はこの一般定期借地権が適用されていると思って良いです。
一般定期借地権は50年以上の借地期間を設定し期間が満了したら建物を解体して地主に土地を明け渡すというルールです。
このように定期借地権は上述した普通借地権(旧法も新法も)と違い、地主からすると必ず土地が返還されるので賃借人に有利過ぎないルールになっています。
定期借地権の種類② 事業用定期借地権
事業用定期借地権とは利用目的が事業用建物に限る契約なので住居には適用できません。 ちなみに事業用定期借地権以外の借地権の用途は、事業でも住居用でも構いません。
定期借地権の種類③ 建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は借地期間が30年以上であり、土地と一緒に建物も地主に返還されます。 その際、地主は賃借人に建物価値相当の対価を支払います。
普通借地権は、新法でも旧法でも基本的に半永久的に住めます。一方、定期借地権は期間満了時に必ず退去すると覚えておこう。
定期借地権マンションを売却するときの注意点
ここまでで借地権には旧法と新法の2種類あり、さらに普通借地権と定期借地権があることが分かったと思います。 次に定期借地権マンションを購入した人に向けて、定期借地権マンションを売却するときの注意点を解説します。
なお、ここでいう定期借地権は一般定期借地権・建物譲渡特約付き借地権のことです。 ちなみに定期借地権マンションの大半は一般定期借地権であり、建物譲渡特約付きのマンションはごくわずかと思って問題ありません。
普通借地権はどうなんですか?
普通借地権は所有権マンションとそこまで変わらないから、あまり気にしなくて良いよ。強いていえば「地代」がかかるから、その点を加味した売り出し価格にしなければいけないね。
定期借地権マンションは売却価格が低くなりがち
まず定期借地権マンションは売却価格が低くなりがちです。 やはり50年以上の借地期間があるとはいえ、所有権と違って「永住できない」点を購入者はデメリットと捉えるからです。 特に、残年数が短くなればなるほど、売却価格は低くなっていきます。
そもそもディベロッパーが定期借地権マンションを新築で売り出すときは、所有権マンションより安く売り出しているはずです。 そのため新築時に定期借地権マンションを購入したときは、相場の20%ほど安価に購入した人が多いでしょう。
しかし言い換えると定期借地権マンションは価格を下げないと売りにくいということであり、それは中古で売却するときも同じことがいえます。
このような事情があるので定期借地権マンションを売り出すときは、競合物件の状況を良く確認し、相場よりも低い売り出し価格に設定する必要があります。
ちなみに実質は半永久的に住むことができる普通借地権の場合はどうなんですか?
普通借地権の場合、実際は所有権マンションとそこまで変わらないから、価格はそこまで変わらないね。ただ、近隣に所有権マンションがあれば、そのマンションよりは若干安くなるかも…というイメージだね。
定期借地権マンションは認知度が低いので売りにくい
上述のように定期借地権マンションは所有権マンションと比較すると、価格が低くなる傾向があります。 さらに定期借地権マンションは世間の認知度が低いので、価格を低くしたとしても売りにくい可能性があります。
日本住宅総合センターによると2019年9月末時点で、定期借地権マンションは世の中に2万4,117戸しかありません。 少々時期はズレますが国土交通省の資料によると2018年時点でマンション供給戸数は約654.7万戸(全国の累計)です。
つまり国内にあるマンションのうち、定期借地権マンションはわずか0.36%程度しかないということです。 このような状況だと、そもそも定期借地権マンションとはどのようなマンションか?から説明する必要があり、その点も売りにくさにつながります。
住宅ローンが付きにくい傾向がある
さらに定期借地権マンションは住宅ローンが付きにくいです。 というのも金融機関は住宅ローンの審査をするときに物件の担保価値を測りますが、土地の所有権がない定期借地権マンションは担保価値が低く評価されがちだからです。
新築時の定期借地権マンションでは、そのマンションを供給するディベロッパーの信用によって、いくつもの金融機関で住宅ローンを組めるケースが多いです。 ただ中古になるとディベロッパーは関係なくなるので、新築時に利用できた金融機関が利用できない…というケースは良くあります。
つまり「買いたくても住宅ローンが組めない」という可能性があるので、その点は後述する「不動産会社選び」をしっかり行う必要があるのです。
定期借地権マンションはローンが付きにくいんですね…
そうだね。実際に定期借地権マンションを仲介したことがあるけど、民間の金融機関ではローンを組めずフラット35しか通らない…というケースもあったよ。 もちろん物件や借入者にもよるけど、所有権より住宅ローンのハードルが上がるのは確かだね。
毎月地代と解体準備金を支払っている場合は買主に大きなデメリット
定期借地権マンションは地代を一括前払いしている場合と、毎月地代を支払っている場合の2通りあります。 仮に毎月地代を支払うタイプだと、ランニングコストとして管理費・修繕積立金以外に地代があるので、物件価格はさらに低く設定する必要があるのです。
そのため「定期借地権であること」に加え、「地代があること」を加味した売り出し価格を設定する必要があります。 また解体準備金も地代と同じく、一括で支払っているか解体準備金として毎月支払っているかの2パターンあります。
地主の許可と名義書き換え料(承諾料)がかかる場合がある
地上権の定期借地権マンションであれば、マンションを売却する場合は地主の許可も承諾料も不要で「通知のみ」というケースも多いです。 しかし物件によっては普通借地権のように、地主の許可や承諾料がかかるケースもあるでしょう。
借地権マンションの売却を成功させるコツ
前項の借地権マンションの注意点を踏まえ借地権マンションの売却を成功させるコツは以下の通りです。
- 価格設定で興味を引く
- 売却期間を長めに想定しておく
- 実績ある不動産会社を選ぶ
なお、ここでいう借地権マンションとは定期借地権マンションのことです。 というのも普通借地権マンションと所有権マンションはそれほど変わらないからです。 そのため普通借地権マンションは所有権マンションよりは価格が若干安くなる…くらいに思っておけば問題ないでしょう。
価格設定で興味を引く
まずは、やはり価格設定で興味を引くことです。 そもそも定期借地権マンションを購入したときは、周辺の所有権マンションよりも安く買っているはずです。
その点を踏まえ周辺で売り出されている所有権マンションの価格よりも安価に売り出すことで、定期借地権マンションが抱える「残存期間が限られている」というデメリットを払しょくしましょう。
売却期間を長めに想定しておく
また定期借地権マンションは、上述した理由で所有権マンションよりも売りにくいのは事実です。 さらに周辺の競合物件(所有権)の価格に大きく左右されるので、売却期間は長めに想定しておくのがベストです。
たとえば周辺で所有権のマンションが安価に売り出したのであれば、その物件が売却されるまで待つ…などの選択肢も必要でしょう。 一般的に売却期間は3か月ほどといわれていますが、定期借地権マンションは4~5か月程度は想定しておくことをおすすめします。
実績ある不動産会社を選ぶ
そして定期借地権マンションの売却実績がある不動産会社を選ぶことも売却時のポイントです。 というのも、定期借地権マンションを売却した実績があると以下のメリットがあるからです。
- 定期借地権のメリットやデメリットをきちんと説明できる
- 住宅ローンを組める金融機関と提携しやすい
- 広告の打ち出し方などのポイントを抑えている
上記はどれも定期借地権マンションを高く・早く売ることにつながります。 そのため不動産会社を選ぶときは査定価格や査定価格を算出した根拠以外に、過去に定期借地権マンションを売却した実績があるかどうかも確認しましょう。
まとめ
このように借地権には普通借地権と定期借地権があり、特に定期借地権は一般的な所有権と大きく違う点が分かったと思います。 そのため定期借地権マンションを売却するときには、上述した注意点やポイントをしっかり理解しておきましょう。
特に「不動産会社選び」は重要なので、所有権マンションを売却するときよりも慎重に選定することをおすすめします。