- 定期借家契約は、あらかじめ契約期間を定め、契約期間が終了すると更新がなく終了する契約
- 一定期間の契約を希望する場合などに効果的
- 5年、10年と長く住める物件ではない
友人が3年間だけ部屋を貸したいらしいのですが、3年間限定の賃貸借契約などできるのでしょうか?
定期借家契約にすればいいと思いますよ。
定期借家契約とはどのような契約なのでしょうか?詳しく知りたいですね。
アパートやマンションを借りるときには一般的には普通借家契約で賃貸借契約を締結します。しかし普通借家契約では貸すことができないようなケースがあり、貸したくても貸せないということも考えられるのです。しかし賃貸借契約は普通借家契約だけではなく、定期借家契約という方法があります。
では、この定期借家契約とはどのような賃貸借契約なのでしょうか?またどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?この記事では定期借家契約について普通借家契約との違いなどについて詳しく解説します。
定期借家とは
定期借家契約は平成12年に新たに導入された賃貸借契約の一種です。
読み方は“ていきしゃっか”
定期借家契約とはあらかじめ期限が設定された契約で指定された契約期間に到達すると更新はできずに賃貸借契約が終了します。定期借家契約が導入された理由は借主を退去しやすくするというのが大きな目的です。賃貸借契約を締結した借主の中にはマナーを守らず近隣に迷惑をかける場合や、立ち退きが想定される場合に多額の立ち退き料を支払うことになる場合があります。
定期借家契約は、このような貸主の不利を防ぐ意味合いでも制定された制度です。賃貸借契約において貸主は不利な局面が多いともいわれていました。しかし、あらかじめ契約期間を設定することで貸主も対抗できる権利を与え、良質な賃貸住宅の供給を図るためでもあります。
定期借家と普通借家の違い
定期借家契約と普通借家契約ではどのような違いがあるのでしょうか?最も大きな違いは前述しましたが更新ができるかどうかにあります。定期借家契約では更新がありませんので契約期間に到達すると賃貸借契約は終了します。つまり入居者は契約期間が来ると退去しなければいけません。
普通借家契約の場合は契約期間が到達しても更新することが可能です。貸主に正当事由があれば契約を更新せずに退去してもらうことも可能なのですが、なかなか難しく、多額の立ち退き料が必要なケースがあります。つまりあらかじめ期限を決めた契約なので、期間限定で部屋を貸したいときなどに定期借家契約は効果的な契約方法といえるでしょう。
平成25年の定期借家契約物件数は全体の4%(前年比+1.1%)
では実際にこの定期借家契約は賃貸借契約においてどのくらいの割合を占めているのでしょうか?
引用:国土交通省住宅局「市場動向調査」
上記表を見てみると定期借家契約と普通借家契約の利用がどの程度なのかがわかります。圧倒的に普通借家契約の方が多く定期借家契約を利用した賃貸借契約は4%程度しかありません。実際の運用上は圧倒的に普通借家契約が多いといえるでしょう。また定期借家契約の利用の推移も上記表を見てみると年度別で違いがあり上昇しているとも言い切れません。
定期借家契約は貸主からみてトラブル防止に効果がある
定期借家契約の利用度は非常に低いですね。
そうですね。しかし、使い方によっては非常に効果的な契約方法で特にトラブル防止に役立ちますよ。
どのようなトラブル防止に効果があるのでしょうか?
定期借家契約は前述しましたが、あらかじめ契約期間が定められている点が大きな特徴です。つまり、いわゆる不良入居者と契約してしまった場合でも契約期間を過ぎると退去させることができるのでトラブルを防止できます。普通借家契約だと不良入居者とはいえ相当の事案が発生しない限りなかなか解約することができません。
定期借家契約で賃貸借契約を締結していると、いざこざがあっても契約期間が来ると退去してもらえるのでトラブル防止にとても効果的なのです。契約期間中大きな問題がない良質な入居者の場合は、定期借家契約が終了しても再契約が可能な点からも自由度も高いといえるでしょう。
事故物件を見分ける方法のひとつにこの定期借家がポイントになることも
ケースにもよりますが事故物件となった次の入居者を定期借家契約によって賃貸借契約することがあります。事故物件とは入居中にその部屋内で刑事事件が起こったものや、部屋内で人が不審に亡くなっているような物件を指します。このような物件はいったん大幅に家賃を下げて募集しなければなかなか入居者が入りません。
しかし大幅に家賃を下げたまま長期間契約されるのは避けたいという貸主の心理からいったん大幅家賃を下げて募集し、定期借家契約で契約します。一定の契約期間契約が終了すると2回目からは通常の家賃で募集するといったことにも利用されているのです。
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定期借家のメリット
定期借家契約は使い方によってはいろいろな可能性がありますね。
そうですね定期借家契約のメリットやデメリットをしっかりと理解し賃貸借契約に利用したらいいですよ。
定期借家契約のメリットやデメリットについて知りたいですね。
定期借家契約は全体の4%程度とまだまだ利用率は高くありません。しかし定期借家契約は貸主の都合により契約期間を決めることができるので計算しやすくいろいろなメリットがあります。ではどのようなメリットが考えられるのでしょうか?ここからは定期借家契約のメリットについて解説します。
短期間の契約ができる!
契約期間を自由に設定でき、その契約期間で契約を終了できる点が大きなメリットです。2年間だけ部屋を貸したいが、それ以上は自分たちが住むので困るといった場合に定期借家契約は有効な利用方法といえます。2年間ではなく1年間の定期借家契約も有効です。
定期借家契約の場合、原則として契約期間が終了する6か月前までに一度、定期借家契約が終了する旨の通知が必要になります。この通知を行っていなければ契約期間が終了しても部屋を明け渡してもらうことができません。きちんと通知をしなければいけませんが、短期間で退去してもらうことも可能となる契約です。
普通借家に比べて物件の質が高い
良く定期借家英訳が使われる事例として多いのが一時的な転勤です。分譲マンションを保有しているが急遽転勤で住めなくなった場合にあらかじめ期間が決められている転勤などの場合は、定期借家契約を利用します。つまり分譲マンションなどでよく使われるので、物件自体のグレードが高いのです。普通借家の場合はあらかじめ賃貸用として建設されているマンションが多いので、万人に向けた仕様や、多くの人が利用するので、そこまで豪華な仕様にはしていません。
しかし分譲マンションの場合は非常にグレードの高い物件も多く、そのようなマンションの賃貸借契約には良く定期借家契約が利用されています。つまり普通借家契約に比べ物件の質が高いのです。
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家賃が相場より低いこともある
家賃が相場より低い場合があることも借主にとって大きなメリットとなります。定期借家契約は、あらかじめ契約期間が定められているためにどちらかといえば貸主主導の賃貸借契約となりがちです。自由な時に解約したいと考える借主は、なかなか定期借家契約のマンションを選ぼうとはしません。さらに定期借家契約の契約期間が短い場合もあまり借主にはメリットが少なく、決まりにくい傾向です。
つまり定期借家契約は借主側から見ると不利な契約と受け取られることがあります。このような不利な内容を埋めるために家賃が安くなっていることもありますので、安く部屋を借りたい場合などには定期借家契約の物件がいいかもしれません。
定期借家のデメリット
いろいろなメリットがあるから定期借家契約も使い方ではかなり効果がある契約になりそうですね。
しかしデメリットもあるので、どちらも理解した上で定期借家契約を結ばなければいけません。
どのようなデメリットがあるのか教えてください。
ここまでは定期借家契約のメリットについて解説しました。利用の割合は圧倒的に普通借家契約が多いとはいえ、定期借家契約も非常に効果的な賃貸借契約であることがわかります。しかし定期借家契約にはデメリットもありますので、十分にデメリットも理解した上で定期借家契約を結ぶ必要があるでしょう。ここからは定期借家契約のデメリットについて解説します。
5年、10年と長く住める物件ではない
定期借家契約の主な利用方法としては転勤などによる一時的な部屋貸しを希望している場合や近い将来建て替えが決まっている場合など利用が限られています。つまり一定期間での退去が前提となりますので、5年や10年など長い期間住めるものではありません。中には10年後に解体するから今のうちから定期借家契約で部屋を貸すといったケースもありますがそう多くはありません。
せっかく気に入って長く住みたいと思っても長く住めないケースがほとんどなのです。借主は短い期間で借りるとなると、また次の引っ越しを頭に入れながら生活することになります。定期借家契約の物件は長く住める物件は少ないといえるでしょう。
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契約更新料はなく再契約となる
定期借家契約は更新がない契約なので契約期間を過ぎると契約が終了します。定期借家契約で引き続き入居したい場合は、貸主と再契約を結ばなければいけません。その場合、更新料ではなく再契約の手数料が発生する可能性があります。しかし再契約できないケースが多いことや再契約の場合も再度定期借家契約となる可能性もありますので注意しておきましょう。
途中解約は原則できない
定期借家契約は原則として途中解約はできません。借主側からの途中解約は、やむを得ない事由があった場合に限り、途中解約は可能です。やむを得ない事由とは、ケースにもよりますが転勤や介護、長期的な入院などがこれにあたります。
また建物の広さが200㎡未満に限り、中途解約の申し入れが可能という点も把握しておきましょう。貸主の場合は基本的に中途解約の申し入れはさらに厳しいといえるでしょう。この場合は立ち退き料などが必要になるケースもありますので、貸主は定期借家契約で契約する場合はより途中解約をしない心づもりで契約を締結しましょう。
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まとめ
定期借家契約は、あらかじめ契約期間を定め、契約期間が終了すると更新がなく終了する契約です。再度住みたい場合は再契約を締結する必要があります。定期借家契約のメリットはマナーを守らないいわゆる不良入居者を、立ち退きすることなく退去させることが可能です。また一定期間の契約を希望する場合などに効果的といえるでしょう。
しかし借主にとっては次の引っ越し先を頭に入れておかなければいけないので、なかなか入居が決まりにくい可能性も捨てきれません。現在の賃貸借契約は、普通借家契約での賃貸借が圧倒的に多く、定期借家契約は実際全体の4%程度とまだまだ浸透していません。しかし、使い方によっては、非常に効果的な賃貸借契約ですので、メリットとデメリットを理解して定期借家契約を利用しましょう。