不動産売却とは?費用や税金と流れ、必要書類や手数料について完全ガイド

この記事のざっくりしたポイント
  1. 不動産の売却には、さまざまな費用や税金がかかる
  2. 住まいの買い替えに関してはライフスタイルによる影響が大きい
  3. 不動産売却には仲介と買取がある

不動産を売却しようと考えたときに「どのくらいお金必要なのか?」・「いつまでに売却できるのか?」と心配になりませんか?不動産の売却を何度も経験し費用や期間などを熟知している人はそう多くはないと思います。家族構成やライフスタイルの変化などが理由で不動産を売却する場合は、じっくりと考慮する時間があると思います。しかしローン返済が滞ったり離婚などネガティブな理由の場合には、売却を急がなければならないでしょう。そこでこの記事では、さまざまな理由で不動産を売却する人のために、売却の際にかかる費用や税金・売却の流れや期間・必要な書類などについて解説します。

不動産売却をする人の目的

 

不動産を売却する人は、どのような理由が多いのでしょうか?

 
 

そうだね、子どもが生まれたので大きな住まいに買い換えたいというポジティブ人もいれば、ネガティブな理由の人もいるよ。

 

不動産売却の理由は人によりさまざまです。主な売却の理由についてまとめてみると次のようなものがあります。

◎ポジティブな理由

不動産売却のポジティブな理由
  • 広い住まいや環境の良い住宅への住み替え
  • ライフスタイルの変化による住み替え
  • 相続した不動産の売却

◎ネガティブな理由

不動産売却のネガティブな理由
  • 住宅ローンの支払いができなくなったため
  • 離婚し財産を分けるために売却する必要がある
  • 自然災害や事故などで住めなくなった

住まいの買い替えに関してはライフスタイルによる影響が大きい

今まで住んでいた住宅が理想の住まいであっても、ライフスタイルの変化により住みにくくなる場合もあります。そのような場合には、ライフスタイルに合致した住まいの買い換えが必要になります。ライフスタイルの変化による住み替えについては次のような理由が挙げられます。

イフスタイルの変化による住み替え理由
  • 子どもが誕生したり大きくなったことで、大きな住まいに住み替える必要がある
  • 自然豊かな環境の住宅で住みたくなったため
  • 子どもが独立し、二人だけの生活になったため小さな住まいに
  • 親と同居するために、大きな家に住み替える必要がある
  • 転勤となったため、転勤先に住居を構える必要がある

最近ではコロナウィルスの影響で在宅勤務が多くなり毎日通勤する必要がなくなったため、都心から少し離れたエリアに住宅を買い換えるケース。またオンライン会議のため独立した書斎が必要になり住み替える場合もあります。

不動産売却には費用がかかる

 

不動産の売却は購入と異なり費用はかからないのですか?

 
 

売却の場合にも費用はかかるんだよ。仲介をしてくれた不動産会社には手数料を、司法書士に依頼すれば報酬を支払わなければならないよ。ほかにも費用はかかるので、あらかじめ用意しておく必要あるんだよ。

 

不動産売却にかかる費用①:仲介手数料

仲介手数料とは不動産売買の仲介をしてくれた不動産会社に支払う手数料。成功報酬なので売買が不成立の場合は、仲介手数料は払う必要はありません。仲介手数料は宅地建物取引業法で下記のように上限が決まっています。

売買価格 報酬額
200万円以下の部分 取引額の5%以内
200万円超400万円以下の部分 取引額の4%以内
400万円超の部分 取引額の3%以内

※なお仲介手数料には別途消費税がかかります

売買価格が400万円超の場合は下記の簡易な方法で仲介手数料が算出できます。

仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税

不動産売却にかかる費用②:登記費用

登記費用は外部からは分からない不動産の権利関係を公示するためにかかる費用。不動産を売却するためには抵当権を抹消するための費用と司法書士への報酬が必要です。司法書士への報酬はお住まいのエリアや司法書士によって異なりますが、1万円~2万円程度が相場です。なお抵当権を抹消するためには登録免許税がかかりますが、税金の項目で解説いたします。

不動産売却にかかる費用③:残りのローンを返済する費用

住宅ローンが残っている場合には原則的に住宅を売却できないので住宅ローンの一括返済をおこなって抵当権の抹消を行わなければなりません。住宅ローンの一括返済をする際には繰り上げ返済手数料がかかります。一括繰り上げ返済手数料が不要の金融機関もありますが、通常5,000円から3万円程度の費用が必要です。

不動産売却にかかる費用④:証明書発行費用

不動産を売却するためにはさまざまな書類を用意しなければなりませんが発行費用がかかる証明書もあります。そのうち住民票と印鑑証明書は、各市町村役場やコンビニエンスストアなどで取得できますが、発行から3ヵ月以内のものを用意する必要があります。いずれも一通300円程度で発行してくれます。

不動産売却にかかる費用⑤:引越し費用

引越し費用は業者や移転先までの距離・荷物の多さなどによって費用が異なります。したがって引越し業者を決める場合には、複数の不動産会社から見積を取り決めると良いでしょう。また引越しの時期により費用は大きく異なります。3~4月は、転勤や入学などで人の移動も多く繁忙期になるので、費用は高くなります。そのため繁忙期以外の時期を選べば費用は大きく節約できます。一般的に50km以内の場合、単身の場合繁忙期で4~6万円、通常期で3~5万円程度。また3人家族であれば、繁忙期で9~12万円、通常期なら7~10万円程度が相場です。

家具や家電を廃棄する場合には処分費用が必要です。家具は各市町村のルールに従って、粗大ごみ料金を支払わなければなりません。家電は家電リサイクル法により支払いますが例えばテレビであれば2~4,000円適度、冷蔵庫であれば4~6,000円程度の費用がかかります。

不動産売却すると税金もかかります

 

不動産を売るときには、税金も払わなければならないのですか?

 
 

そうなんだよ。ただし売却して利益が出ない場合には、所得税や住民税は納める必要はないんだよ。また所得税には軽減税率の特例があるので、しっかりチェックしておきたいね。

 

不動産売却にかかる税金①:消費税

居住用不動産の個人間の売買については消費税が課せられることはありません。したがって売主が買主から消費税を預かって納税することはありません。しかし不動産会社に支払う仲介手数料および司法書士に支払う報酬・一括繰り上げ返済の手数料については、10%の消費税がかかります。

不動産売却にかかる税金②:印紙税

不動産の売買契約の際には契約書に印紙を貼って印紙税を支払わなければなりません。売主・買主がそれぞれ負担しなければなりませんが、契約書を1通のみ作成し売主は写しを保持する場合には、印紙税は不要です。印紙税率は次のようになります。

契約金額 本則税率 軽減税率
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円

※軽減税率は令和2年4月1日から令和4年3月 31日まで

不動産売却にかかる税金③:所得税・住民税  

不動産を売却して利益が出た場合には所得税および住民税復興特別税・住民税を納める必要があります。不動産を取得して5年以上経つ場合には長期譲渡所得、5年未満の場合には短期譲渡所得の扱いとなり税率は下記のように大きく異なります。

所有期間 所得税 住民税 合計
長期譲渡所得(5年超) 15.315% 5% 20.315%
短期譲渡所得(5年以下) 30.630% 9% 39.630%

※所得税には復興特別所得税2.1%を含みます

なお納税時期は所得税については売却した翌年の2/16~3/15に住民税については売却した翌年度の6月以降に納めます。

不動産売却にかかる税金④:登録免許税

不動産を売却する場合に行わなければならない登記には所有権移転登記と抵当権抹消登記があります。登記を行う場合には登録免許税を納めなければなりませんが所有権移転登記は通常買主が全額負担します。税率は固定資産税評価額の2%となっています。住宅ローンを利用した場合には金融機関から抵当権が設定されますが、売却に際して売主は残債を完済し抵当権の抹消登記を行わなければなりません。抵当権の抹消登記については、売主が責任をもって行い税金を負担しなければなりません。

抵当権抹消登記の登録免許税は次の式で算出します。

抵当権抹消登記の登録免許税=不動産の数×1,000円

不動産の数は土地と建物を別に数え土地が何筆(筆=土地を数える単位)にも分かれている場合には合計して数えます。例えば建物が1棟、土地が2筆に分かれている場合には3,000円を納める必要があります。

不動産売却にかかる税金⑤:固定資産税・都市計画税

固定資産税は1月1日の時点で固定資産課税台帳に登録されている土地・家屋の所有者に課税される税金。また都市計画税は市街化区域内の不動産にかかる税金です。物件の引渡し日までは売主が日割りで負担し、引渡し日以降については買主が売主に精算金として支払うのが一般的です。

不動産売却にかかるその他の費用

 

不動産売却にかかる諸費用や税金のほかに発生する費用はないのでしょうか?

 
 

必ず発生するわけではないが、場合によっては次のような費用が発生することも覚えておかねばならないね。

 

解体費用

建物が老朽化し価値がゼロのような場合には、更地にして売却した方が買い手が早く現れる可能性があります。しかしその場合、解体費用が多額になることもあります。また住宅が建っていれば固定資産税の軽減措置が適用になりますが、解体してもなかなか売却できない場合には費用負担が多額に上る恐れも。したがって住宅を解体して売却するか古家付き土地で売却するかよく考える必要があります。一般的な解体費用の目安は、木造の住宅ならば15,000円/㎡程度で、30坪の住宅であれば140万~160万円が相場。

測量費用

土地の境界が不明な場合には土地家屋調査士による測量を行い、境界を確定しておく必要があります。測量費用は土地の広さと形により異なりますが、住宅用地で30万円~40万円程度かかるのが一般的です。なお費用負担は買主と売主どちらかが負担するという決めはありませんが、買主は購入資金がかかるので不動産会社は売主負担として進めることが多いです。売主としても売れずに残ったままですと固定資産税等もかかるので、測量費や手数料の負担はやむを得ないところでしょう。

クリーニングやリフォーム費用

住宅を購入する際に購入希望者は通常内覧をして決定します。その際買主は住宅の印象をよくするためにきれいな状態にして見せる必要があります。ご自分で掃除をしてきれいにできればよいですが水回りなどは汚れが落ちにくいので業者に依頼した方が良い場合もあります。クリーニングの相場は広さや居住しているか否かで料金は異なりますが、2DKで3~5万円程度が相場です。

なお売却するためにリフォームをするのは、おすすめできません。リフォーム費用は多額の資金が必要ですし売却価格に全額上乗せできるとは限りません。また近年は築古住宅を買って自分でリフォームしたいと考える人も多いからです。ここから

不動産売却には仲介と買取がある

 

不動産を早く売却しなければならないこともありますが、そのような場合には良い方法はありますか?

 
 

早く売りたいときやなかなか売却できない場合には、買取という方法があるんだよ。買取は不動産会社が直接購入してくれるので、早く売れるんだよ。

 

買取と仲介の特徴をまとめると次表のようになります。

  買取 仲介
購入者 不動産会社 個人
売却価格 相場より2~4割ほど安くなる 通常相場価格で売却が可能
売却までの期間 直ぐ売却できる 売却までに時間がかかる
仲介手数料 不要 必要
内覧対応 不要 必要

次のような場合には、買取を選択するメリットは大きいと言えます。

買取を選択するメリットが大きいケース
  • 早く売却して現金を得る必要がある
  • 仲介手数料などの諸費用や税金を支払うお金がない
  • 売りに出していることを近所の人に知られたくない
  • 築古物件だが解体をする費用がないので、そのまま売却したい

不動産売却の流れと期間

 

不動産を売ろうと思ってから売却が終わるまではどの程度の期間がかかるのでしょうか?

 
 

そうだね、売却を考えてから、売却ができる迄だいたい2~6カ月程度かかると考えたほうが良いね。それでは売却の流れと必要な期間の目安について説明しよう。

 

 

売却の流れ 目安 内容
不動産の査定 1~4週間 ・売出価格を決めるために、不動産会社に査定を依頼
適切な査定を得るために、複数の不動産会社に見積を依頼
媒介契約締結
1~3ヵ月
・信頼できる仲介会社と媒介契約を締結する
不動産会社は売却のための重要なパートナー
⇒したがって優秀な仲介会社を見つける必要がある
売却活動 ・売出価格設定…周辺相場から不動産会社と相談し設定
・内覧…チラシ等の広告活動により購入希望者が現れたら内覧
きれいに掃除をして印象を良くしなければなりません
・条件交渉…気に入ってもらったら売価を含めて条件交渉をする
購入希望者の話も聞いて、柔軟に対応しましょう
売買契約の締結
1~2ヵ月
・条件がまとまれば手付金を受領し、売買契約を締結します
買主はローン申請~審査があるので決済まで時間がかかる
物件引渡し・決済 ・決済…買主・売主・不動産会社・金融機関が一堂に会します
⇒売買残金支払・不動産会社へ仲介手数料・司法書士へ報酬
・物件の引渡…建物や土地の状況を確認し物件を引き渡します

まとめ

不動産の売却には、さまざまな費用や税金がかかります。どんな費用や税金がかかるのかその内容を十分に把握しておかないと、余分なお金を使うことになりかねません。また不動産の売却は、急を要する場合も多々あります。できるだけ早く売却したい方のために、買取という制度についても解説しましたので是非参考にしてください。